3月11日(日)に、ラグタイム音楽のトップピアニストである池宮正信さんのチャリティーコンサート「クラシックとラグタイム―愛と感謝―」が行われました。今回のコンサートをもって日本での活動に終止符を打たれ、今後は米国での活動に注力されるとあって、池宮さんを慕う多くの関係者が来場。笑いあり、涙ありの感動のラストコンサートでした。
コンサートは始めに、ブラームスのピアノソロ曲を、心をこめて演奏。力強くて優しい音色は、池宮さんのこれまでの歩みがそのまま音に反映されているかのようでした。
つづいて、池宮さんのピアノBGMにのせて、米国での池宮さんの暮らしを紹介するスライドショーが流されました。現在池宮ご夫妻が生活している、米国メーン州の森にある農園「ピースファーム」と、そこに暮らす動植物たち、近隣住民とのふれあい。慰問コンサート、地域のフリーコンサート、ホームレスに聖書と食べ物をふるまうボランティア活動などの慈善音楽活動の様子が、スライド写真で紹介されました。ピアノの調べ、金子みすずのメッセージ、生き生きした写真が三位一体となり、まるで美しい短編映画を見ているかのような気持になり、今生きていることへの感謝が自然と湧き上がってきます。
「森の中で暮らしていると、自然がさまざまなことを教えてくれます。太陽、風、雨の恵み。当たり前のようで奇跡の連続。目に見えない大きな力(神様、仏様)が、この世を動かし、慈悲の光を与えてくれています」と池宮さん。
次はお待ちかね、ラグタイムの時間。装い新たに、ハット×ベスト姿の池宮さんが、どこかで誰もが一度は聞いたことがある、有名なラグタイムナンバーを中心に演奏しました。本来ちょっとお堅いクラシック曲を、軽やかにユーモラスにアレンジを加えたラグタイムは、19世紀後半に生まれた黒人音楽。笑いあり、手拍子あり、掛け声ありのノリノリな生演奏。ラグタイムのもつ「今を明るく前向きに変える」パワーを感じました。最後に演奏されたウィリアムボルコム「最後のラグ」は、別れの切なさ、時間のはかなさ、人生の素晴らしさが伝わってくるような、美しい調べでした。
最後に、2011年東日本大震災の追悼を込めて、まつぼっくり少年少女合唱団と一緒に「花は咲く」を演奏。前奏で黙とうを行ったあと、まつぼっくりの団員が犠牲者やその家族らを想い、心を込めて歌い上げました。
「奈良は良かったね、平和だねは違う。自分のことのように思ったら、いったい何ができるか?を考えていきたい」と荒井代表。
続く「上を向いて歩こう」も、ラグタイムバージョン。永六輔先生に生前池宮さんが直接うかがった歌詞の秘話も教えていただきました。
「この曲はさみしそうな歌詞だけど、本来は希望の歌。お月さま、太陽は常に我々に光を注いでくれている。今は自分の心が曇っているから、届いていないだけなのです」
アンコール曲は「青い山脈」。ボーカルに五條さんも加わり、観客も口ずさむ大盛り上がりの中、コンサートは終わりました。
終演後には、池宮さんから来場者にサプライズも。なんと、池宮さんのCDや教則本、愛読書を無料プレゼントしてくださいました。池宮さんの国内コンサートは今回で最後ということでさびしい限りですが、米国でのご活躍を心よりお祈りしています。お体にはお気をつけて、いつまでもお元気で。